お侍様 小劇場
 extra

   “わらべと遊ぶ” 〜寵猫抄より


芸人さんのシチュエーション・コントや
海外のコメディードラマの吹き替えなんぞで使われる、
“赤ちゃんが笑うときの声”っていうのがあるじゃないですか。
ワンピース的に描写すると“あひゃ・あひゃひゃvv”っていうアレ。
(…却って判りにくいでしょか?)
これまでは、いかにも合成声じゃないかと、
正に効果音っぽいなと思っていたんですけれど、
実際に赤ちゃんを前にすると、
そんなこたぁないってことが重々判ります。
むしろ、よく出来てるなぁと、
サンプラーは肉声じゃないのかなと思うほど、
ああいう笑い方をするんですよね、赤ちゃんて。
どんどんと育ってゆき、
発声がしっかりして来て、言葉を紡ぎ始めると、
単なる“笑い”が“笑い声”になるから、
“あはは”“きゃはは”という
表記しやすい輪郭付きになるのであって。
あひゃひゃ、あひゃひゃ、きゃーっ♪と
ホンマによく笑う赤ちゃんと一緒にいると、
それは幸せな気分になってしまう
今日この頃なのでありましたvv



  ………と、
  もーりんの近況で終わってしまうところでしたが (おい)





       ◇◇



島谷せんせえこと、島田勘兵衛さんチには、
小さな小さなメインクーンの仔猫がおります。
特別な事情のある子らしくて、
ティーカッププードルや豆しばどころじゃあない、
全体の大きさも体バランスも、
赤ちゃんサイズから一向に育たぬ仔なのでありますが。
それでも…健康面では一切問題はないらしく、
日々、それはそれは元気よく過ごしておいで。
洋館仕様であるがため天井の高いお家のリビングで、
一般よりも少々高い目の位置にあるカーテンレールまでを、
よいちょよいちょと果敢に登ったり。
登ったはいいが降りられなくなって、
片側へ寄せられたカーテンの端が、フリルのようになったレールの上へ、
身を丸め、四肢をちょこりと揃えた姿勢になり、
怖々という様子のまま、
七郎次さんを“にゃあう・まぁう”と切なげなお声で呼んでみたり。
そうかと思えば、
うっかりとケースの蓋をし忘れたボックス・ティッシュに目ざとく気づき、
小さな爪の先に引っ掛かってくるやわやわふんわりのティッシュ、
そ〜れ ほ〜れと、覚束ない万歳を思わす仕草にて
次々引っ張り出して散らかしたおし、

 『…あ、こらっ。』

見つかってのお声には、さすがに“しまった”と思うらしいのだが。
そこがまだまだ幼い身ゆえ、
俊敏に“しぱたたたっ”とは逃げ切れない。
びくくっと身を震わせたそのまま、
身を返しての逃げかかった足元に散乱するティッシュに、
それこそ足を取られてしまっての逃げられず、

 『久蔵、これしちゃダメだよって言ったでしょうが。』

歩み寄って来た七郎次おっ母様に容易く捕まっての、
お膝に抱え上げられ、
ふわっと掴んだティッシュを軽くお顔に当てられて、

 『メッ、なんだからね? い〜い? メッ、だよ?』
 『みゃおう〜〜。』

見下ろしてくるおっ母様へ“ごめんちゃいましぇ”のお顔して。
ティッシュはいやいやと、シチのお胸の方へお顔を伏せて、
そいでお説教は終わるのだけれど。

 『…そんな甘い叱り方じゃあ、
  遊んでもらってるとしか思わぬのではないか?』

 『そうお思いなら、
  見てないで止めるとか勘兵衛様が叱るとか、
  打って出て下さいませ。』

一部始終を最初から見ていた人に言われましてもと。
敏腕秘書殿が…細い眉を平らに均しての仏様のような半目になって、
“そんなお言いようをなさいますか”と
おひげの御主様へ呆れ顔になるのも無理はないと思う人、手を上げて。
(笑)


  これらの全てを


大人の手のひらの上、
ちょこりと乗っかれてしまえる仔猫が
腕白にもやらかしていたならば、
そりゃあ愛らしい やんちゃっぷりだろうけれど。

 こちらの家人たちの目には、
 そうは見えていないもんだから

ほわほわな金の綿毛も軽やかに、
お人形さんのように甘く愛らしいお顔の幼子が、
寸の詰まった手足を
よいちょよいちょと危なっかしくも使ってのこととして、

 『…っ、久蔵っ!』

タンスの上だのカーテンレールの上だのへ登ってしまうたび、
運んでいる途中だったトレイ、
引っ繰り返さんばかりに驚いてしまう七郎次さんなのは、
やはり已を得ないことだろし。
組木細工のほどこされた、
少し仰々しいケースをはめられたボックスティッシュの、
すぐ傍らに小さなお尻を降ろしてちょこり座り込んだ坊や。
付け根にえくぼの浮かぶお手々で、しょーれ、しょーれと、
次々に中身を引っ張り出してはしゃいでおれば。
一瞬、天使みたいだと ほわり見惚れつつも (こらこら・笑)
いけませんたらと叱ってしまっても、
それもまた やはり当然のことだろし。

 そしてそして

そんな悪戯したの、危ないでしょういけないでしょうと叱った幼子から、

 『うにゃ〜〜〜〜ぁん。』

甘い甘いお声で長く鳴いての、
うるうるした大きな瞳で見上げて来られてご覧なさいな。

 「………まま、確かに
  穏やかならざる心地になるというのは判らぬではないが。」

 「でしょでしょ、でしょう?」


以前はあんまり使わなんだはずな、
そういう蓮っ葉な物言いはどこで覚えてくるのだろうかと。
ちょっとばかり面食らっての、
そちらへも物申すをしたい心地になったらしき勘兵衛と向かい合い。
七郎次が意気盛んなお言葉を返していたのは、
島田さんチのリビングの、よ〜く磨かれたフローリングの上であり。
子供への教育方針という、結構真面目な語らい合い中の、
そんな二人の狭間には。
板の間へごろんちょと仰向けに寝そべっての、
頭の上へ上げた腕、七郎次から軽く押さえ込まれた小さな童子が、
きゃっきゃとはしゃいであやされており。
時折 白い手が降りて来て、
柔らかな動きで脇の下やら腹の上やらを、
ここぞとばかりにくすぐると、

 「にゃあっ、みゃっ、みゃんみゅっ!」

きゃっきゃと甲高い声を上げ、手足をばたつかせ、
目許を細くたわめて笑いつつ、
くすぐったいようっともがくように大暴れする様子が
いかにもやんちゃで、されど何とも愛らしくって。

 「だから。
  決して…猫だからという区別をしての、
  ゆるくて甘い対処なんてとってはおりません。」

ちゃあんと“ごめんなさい”と反省したのを見た上で、
だったらもういいよと、
いつまでも後を引かせずの、すっぱり切り替えているだけのこと。
そうと胸を張っての主張をするところまでは、まま善しとして、

 「なぁ〜あ、久蔵?」
 「みゃ〜う・まうvv」

うふふんと それはもうもう蕩けそうなほど甘甘な笑顔で、
大好きな幼子を覗き込み、
ねぇ?と相槌を打ち合う様を見る限り、

 “親ばかという方向ででも、
  結局は甘い…ということに なりはせんのかね。”

傍観者の勘兵衛が、
精悍なお顔に似合いの苦笑混じり、
ちょっぴり呆れるのもまた、致し方がないというところかと。
第一、そんな想いを巡らせる壮年殿だとて、
新聞を広げておいでのお膝へ、
その新聞の下の縁を懸命にめくり上げての侵略果たしたあと、
にゃは〜〜っというお愛想の笑みを向けて来たそのまんま、
手の届く限りを引っ掻いてやろう掴んでやろうと、
虎視眈々でいるのがありあり判る、小さな暴れん坊さんの睥睨へ。
そんなしていてのこと、くりんくりんと落ち着きなくっての、
それはそれは挙動不審な小さなつむじを手元へ見下ろしつつも。
引き留めることはなくの、むしろ見物に回る彼だったりするくせにね。
いよいよそのお手々にての、やんちゃな乱暴狼藉が始まれば、

 『…あ、これっ、久蔵、何してますかっ!』

お邪魔をしてはなりませんと、七郎次がすっ飛んでくるのも楽しいと、
ある意味、立派に加担してもいるくせに。
七郎次さんへ、

  ―― お主は久蔵に甘いのではないか、なぞと

もっともらしい意見をするなんて。
ホント、この親にしてこの子あり とはよく言ったもんです、はいvv


 「もーりんさん、それはちょっと喩えが違う。」
 「うむ。
  どちらかと言えば“破れ鍋に綴じ蓋”の方が好みだが。」
 「……勘兵衛さま、好みとかそういう話をしている訳では。」
 「にゃうみゃあvv」





   〜Fine〜  2011.06.20.


  *小姫ちゃんのお気に入り、いないないばぁのDVDを
   連日のように観て聴いてるわけですが、
   微妙に“童謡”じゃあないんじゃあ?な お歌も収録されていて。
   (みんなのうたで人気があった歌だとか。)
   いやまあ、昭和の初期の唱歌だけが“童謡”でもなかろうとは思うのですが、
   歌詞やテンポが覚えていたのとは随分違ってたりするのへ
   おやや?と感じること、しきりだったりいたしまして。
   例えば、運転手はキミだ、車掌はボクだ…の“電車ごっこ”は
   メロディが微妙に変わっていましたし。
   他にも…そうそう、
   歌詞だけをマンガか何かで“見た”ことだけあったのが
   『トラ〜のパンツはいいパンツ〜♪』というお歌で。
   私はてっきりあのピンポン○ン体操の歌か、替え歌かと思ってたんです。
   ところが 聴いてビックリ、
   メロディラインは“フニクリフニクラ”だったんですよね。
   行こう行こう火の山へが
   はこうはこう鬼のパンツ…になってて、ありゃまあと驚いたのなんの。
   …何で山登りの唄のまんまじゃいけなかったんだろか。
   地獄の釜の中を覗こうというのはやはり不味いのだろうか。
   それとも元の歌は歌詞がかけ離れて違うと判ったんだろうか。
   子供向けじゃなかったとか?
   でも、それを言ったら『森へ行きましょう』なんて
   もんの凄く〜〜と聞いたことがありますが。

  *それにつけましても。
   実は…青年仕様の姿に見合った中身の
   大妖狩りという久蔵殿だったはずですが、
   このところは夜中でも、
   兵庫さんから呼ばれぬ限り
   ずっとずっと仔猫の身でいたりして。

   《 もしかして
     そっちの方が楽だとか楽しいとか思っとらんか?》

   《 …………。》笑

   でもでも、

   《 …………。》

   自分はどうなのだと言いたげに、
   笹から下がる短冊のアップリケ、
   大きく縫い取られた上着を
   ジト目で見つめる久蔵殿だったりして?

   ※背中側なので本人には見えてない。
    カンナ村の毛糸に匹敵する、雪乃さんのお裁縫の腕前…?

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